日本語の連体修飾節における「~スル、~シタ、~シテイル」の使い分け
要旨:日本語の連体修飾節における動詞のテンスとアスペクトの使い方の問題は日本語の文法において難しい分野である。これまでの研究は「~スル、~シタ、~シテイル」という連体修飾節における動詞の三つの形独自の使い方に注目した場合が多く、使い方を比較しながら検証するのにはあまり触れていないようである。そのため、本文はテンスの面とアスペクトの面に分けて、連体修飾節における「~スル、~シタ、~シテイル」の使いわけを研究していきたいものであえる。
キーワード:連体修飾節、テンス、アスペクト、使い分け
日本語の連体修飾節は中国語と比べて動詞が使えるため、用法がより豊富になり複雑にもなる。また、日本語の動詞は形の変化に応じて意味が変わるものであり、おなじ形であっても、アスペクトの面から見ても意味がまったく違う場合がある。連体修飾節における動詞はそういう特徴を持っているため、その活用が外国人日本語学習者にとってかなりの難問となるのである。
寺村の研究によると、連体修飾節と被修飾語の関係は「内の関係」と「外の関係」に分けてみる必要がある。「内の関係」というのは、修飾節と被修飾語の間に格の関係が成立するものである。「内の関係」が存在する連体修飾節は「関係節」と呼ばれる。「昨日読んだ本が面白かった。」という例を挙げてみると、修飾節の述語「読んだ」と被修飾語「本」の間にヲ格関係が存在することは明らかになっている。それに対して、「外の関係」というのは修飾節と被修飾語の間に格関係が成立しないものである。「外の関係」が存在する連体修飾節は「内容節」と呼ばれる。「駅前に大きなホテルを建てる計画がある。」という例がある。修飾節の述語「建てる」と被修飾語の「計画」の間に格の関係が存在しない。
内の関係の連体修飾節のテンスに関する考察はすでに多くの先行研究が行われているが、テンスの選択にかかわるものに各研究が違う焦点を当たっている。橋本修は連体修飾節テンスの基準時選択において主節時が優位性をもっていることを指摘している。また、淮阴師範学院外国語文学系の陳宏恩は連体修飾節におけるテンスの選択がまず修飾節に時間的な語がある場合とない場合に分ける必要があると示している。
動詞のアスペクトに関する研究はすでに数多くの成果を得たところである。文末の動詞のアスペクトの適用規則は連体修飾節における動詞の場合にも深く関係するものであると浙江外国語学院の盛文淵が指摘している。そして、ハルピン師範大学東語学院日語系の劉楊秋が更に日本語母語話者と各レベルの中国人日本語学習者を対象にアンケート調査を行ったところ、動詞が「~テイル」の形で文末に使われる傾向が大きかった代わりに、「~タ」の形で連体修飾節に使われる傾向が大きかったということが日本語母語話者と上級中国人日本語学習者の対象者から分かった。
また、日本語の連体修飾節における動詞はテンスの意味とアスペクトの意味から脱することがある。金水敏はテンスとアスペクトの束縛から解放された「~タ」は単純な状態を表し、形容詞に当たる「~タ」の形をとった動詞はテンスとアスペクトから開放されることになっていると指摘している。
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